養鶏新聞 関係記事紹介ページ

2025年1月5日
鶏鳴新聞 2025/1/25

HPAI 発生ピークに向け対策強化を!
農水省が「鳥インフルエンザ防疫対策本部開く


 農林水産省は、年末年始に高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生が相次いだことから、1月7日と14日に「鳥インフルエンザ防疫対策本部」を開き、これ以上発生が広がらないよう「関係者一丸となり、緊張感をもって、さらなる警戒と対策の徹底強化」をしていくことを確認した。

 農水省は、昨年11月21日にも「鳥インフルエンザ防疫対策緊急全国会議」を開き、4点の対策強化のポイントを打ち出していたが、年末年始に茨城、愛知、岩手、鹿児島で続発したため「1月はまさにトップシーズンで全国どこで起きてもおかしくない」として、さらなる対策強化と、発生予防・まん延防止をアピールした。

対策強化のポイント として同省は、
① 危機感の共有(「自分のところに来ても全くおかしくない」覚悟での体制構築と関係者間での危機感共有)
② 飼養衛生管理の隙を埋める対策(従来の取り組みに加え、農場外関係者を含めた例外なき消毒徹底、鶏舎への塵埃侵入防止などの新たな対策の実施。死亡羽数が多くなってからの通報が多く、通報遅れは地域のまん延につながるため早期通報の徹底が重要)
 ③ 大規模農場対策・再発対策)今シーズンの発生事例の過半が過去に発生した農場または地域で再発しており、大規模農場や再発地域では注意喚起や再点検が重要。飼養羽数20万羽以上の農場での飼養衛生管理の再点検や、殺処分羽数の低減に向けた分割管理の推進)
④ 発生時の速やかな防疫措置(発生しても1例で止めることが基本。迅速な初動対応に向けた体制の再点検と十分な防疫資材や作業員の確保)――を示した。


発生予防・まん延防止対策 としては、
① 農場や地域一体となった発生予防対策の強化
② 発生時の速やかな対応
③発生農場の家禽の再導入に向けた指導を挙げている。

「対策本部」には、江藤拓農林水産大臣もメッセージを寄せ、「早期に通報することが、最終的には被害の拡大を防ぐ一番の方法。
怪しいと思ったら、間違いでもいいから通報して検査を受ける。
これが養鶏業界を守る一番の道」と強調した。
14道県39事例
殺処分は約693万羽

 
令和6年(2024年)末からHPAIの発生が相次いでいる。
農水省によると令和6年10月17日から7年(2025年)1月19日までに道県.39事例のHPAIが発生し、約693万羽が殺処分の対象となった。
 
2024年12月29日には茨域県八千代町の採卵鶏農場(約107.9万羽)で確認された。
茨域県は半径3km圏内に移動制限区域(1農場、約7000羽)、3~10km圏内に搬出制限区域 (1農場 約160.8万羽)を設け、殺処分は1月4日に終了し、 防疫措置は1日に完了した。
 
2025年1月に入ると、愛知県で2日に常滑市の採卵鶏農場(約14.4万羽)で確認された。
さらに6日常滑市の採卵鶏農場約(12.3万羽)で2例目。
9日に常滑市の採卵鶏農場(約13.6万羽)3例目。
10日に常滑市の2つの採卵鶏農場(約5.7万羽と約11.2万羽)で4例目と5例目。
11日に常滑市の採卵鶏農場(約1.7万羽)で6例目。
16日に常滑市の採卵鶏農場(約8.3万羽)で7例目。
19日に半田市の2つの採卵鶏農場(約12.7万羽と約20.6万羽)で8例目と9例目。
常滑市の採卵鶏農場(約5.9万羽)で10例目。
阿久比町のウズラ農場(約25.1万羽)で11例目を確認。
1~7例目までは殺処分が終了した。
愛知県の今シーズンの殺処分対象羽数は過去最高の約132万羽となっているほか、防疫作業員を乗せたバスの事故なども起こっている。
 
19日の第7回愛知県特定家畜伝染病緊急対策会議で大村秀章知事は「今回、新たに4農場で同時に疑似患畜が確定され、大変衝撃を受けている。これまでは近傍農場で発生だったが、今回確認された農場の中には5km離れた場所でも確認された。この上は、さらに踏み込んだ防疫.まん延防止対策を講じていく必要がある」などと述べ、自衛隊への災害派遣を要することも示した。
 
岩手県では2日に盛岡市の採卵鶏農場(約1.2万羽)で確認され、さらに5日に軽米町の肉用鶏農場(約4.8万羽)で2例目を確認。
11日に盛岡市の採卵鶏農場(約40.4万羽)で3例目を確認した。
県内の1例目は6日、2例目は7日、3例目は16日に防疫措置を完了している。
 
鹿児島県では7日に霧島の肉用鶏農場(約12万羽)で県内3例目を確認。農場は県内2例目農場の3km圏内にあった防疫措置は9日に完了した。
 
宮崎県では11日に串間市の肉用鶏農場(約3.0万羽)で県内2例目を確認。防疫措置は12日に完了した。
 
千葉県では12日に銚子市の採卵鶏農場(約41万羽)で県内2例目を確認。さらに15日に銚子市採卵鶏農場(約42万羽)で3例目。16日に旭市の採卵鶏農場(約3.7万羽)で4例目。18日旭市の採卵鶏農場(約48万羽)で5列目。19日に銚子市の2つの採卵鶏農場(約28万羽と約36万羽)で6例目と7例目。旭市の採卵鶏農場(約1.7万羽。疫学関連2農場の約13.9万羽と合計すると約15.6万羽)で8例目を確認。
千葉県では1~8例合計で約218万が殺処分の対象となっている。

2025年の養鶏産業の課題
鶏鳴新聞 2025年1月5日
 2025年の養鶏産業の課題 持続可能は安定発展への道

家禽産業は国や年齢、宗教を問わず、人々の暮らしや健康を支え、地域の社会経済の中で欠くことのできない役割を果たしている(写真は2024年10月のワールドエッグデーの活動から、 関連記事 に続く)

鶏鳴新聞 2025年1月5日
2025年の養鶏産業の課題
持続可能は安定発展への道を


2004年に、7年ぶりに発生した高病原性鳥インフルエンザ(HPAI) の脅威は、収まるどころか一層拡大している。
生産者は、20年前から毎年、ウイルスの侵入防止のために多大な投資をして対応を強化するとともに、厳格な飼養衛生管理基準を順守し、国や都道府県も指導の徹底と、まん延防止対策を強化してきた。
ただ、どれほど警戒を強化し、必死に対策をしても、ウイルスを運ぶ渡り鳥や野生動物をコントロールできない限り、発生の可能性はゼロにはならず、関係者は常に緊張下に置かれている。
そして、自身の努力では完全に防げない事態が発生するたびに、生産者は財産と商圏を失い、関連事業者も大きな被害を受け、需給は混乱する。
このような状況を、未来の産業の担い手にも続けさせて良いのか。
バイオセキュリティなどを中心とする既存の対策は、さらに強化していかなければならないが、予防の水準をさらに高めるためにも、ワクチンなど追加の新たなツールの導入を、真剣に検討する段階に入っているのではないか。
わが国では現在、HPAIワクチンの使用が認められていない。
緊急用に数百万羽分程度備蓄しているワクチンも使用されたことはなく、さらにこれらを接種した家禽も、原則として殺処分の対象になるとされてている。
一方、世界ではヒトを含む哺乳類への感染も広がる中、HPAIワクチンの生産現場への導入や、野外環境での試験が始まっている。
ワクチンには接種と監視の費用、野外株変異時のシード株の変更、貿易の停止など課題もあるが、利点として環境へのウイルス排出量の大幅な抑制、周囲の人や哺乳類などがウイルスに触れる機会の低減、負担が大きい淘汰関連作業の減少、家畜福祉の向上、生産物の需給安定により関連事業者もより安心して業務や商品開発に取り組めることなどが挙げられる。
産業が疾病に敗北することなく、持続可能な発展への道を進んでいくためには、まず担い手が安心して生産や経営を継続できることが、絶対的に「不と可欠」だ。
そこに立ちはだかる課題は、産官学が協力して克服し、新たなツールの実用化を急ぐ必要がある。
2025年が、その第一歩となることを期待したい。
この疾病を描いても、畜産現場は昨年、諸コストの高騰により、極めて厳しい経営を強いられた。
特に鶏卵は赤字経営の中で、マスメディアは卵の価格が「高い」と盛んに報じた。
その間に世界では、日本より大幅に高い鶏卵価格が一般的となり、日本の1人当たり鶏卵消費量に迫り、超えていく国々も増えた。
鶏肉や鶏卵が、これからも人間の生命を支えていくことは揺るがず、むしろその重要性は一層増している。
こうした世界の動きの中で、人口減少下においても需要を縮小させず、国産鶏卵・鶏肉の国産鶏卵・鶏肉の生産・流通基盤を育成していくためには、マスメディアに栄養面・健康面・環境面のいずれにおいても素晴らしい特徴を持つこの畜産物の正しい知識と価値、生産現場の状況、そして役割を伝えるとともに、行政や消費者などにも幅広い理解を得ていく必要がある。
産業の川上から川下までが、関連事業者とともに長期的な視野に立って、ニーズに応えるメニューの開発や新商品の提供、消費機会の創出に協力し、ウイン・ウインの関係を構築するとともに、官学を巻き込みながら現状を共有し、わが国の家禽製品の安定供給と、食料安全保障の維持につなげていかなければならない。
鶏鳴新聞 2025年1月5日
日本のコメ政策など議論
『瑞穂の国』守りたい
飼料用米振興協会


 (一社)日本飼料用米振興協会(海老澤恵子理事長)は12月5日、東京都中央区の食糧会館で『第9回コメ政策と飼料用米に関する意見交換会』を開いた。
 海老澤理事長は同振興協会について、飼料用米の普及が食料自給率の向上や水田保持、持続可能な農畜産業の継続に欠かせないため活動していると改めて紹介。
 今夏以降の『コメ不足問題』は、多くの消費者にとって改めて国内農業と水田の価値を考えてもらう契機になったと述べた。
 一方、改正後の食料・農業・農村基本法などの農政面については「食料自給率が単なる指標の1つとされ、国は農地の集約化と大規模化、水田の畑地化を推進しようとしている。また、財務省は飼料用米に対する交付金を引き下げ、水田政策の交付金も外そうとしていることが分かった。これでは水田がなくなってしまうと大変危惧している」との危機感を示して開会した。
 信岡誠治理事は、米の収穫量は1967年のピーク時は約1426万トンであったが、2024年には約734万5000トンまで半減しているとし、国は本格的な『廃田政策』に舵を切ったのではないかとの見方を提示。
 水田には水をため込む『あぜ』があるが、これを畑地化し、大型トラクターが走りやすいようにとあぜを壊し、水路もなくしてしまうことは将来に禍根を残すと強調した。
 その上で「水田を水田として生かして使うことのできる『飼料用米の増産』が食料安保の要にもなる。その信念で我々は政府からの補助金なしで地道に活動を続けている」と話した。
 また信岡氏は、水田の価値を見直してもらうためのアイデアとして、自身の少年時代、農閑期の田んぼでは草野球を楽しんできたとの思い出を交えながら「農閑期には田んぼを開放し、子どもや地域の人たちの遊び場にしていこう」と提案。
 実際にサッカー教室などが開かれている地域もあると事例紹介した。
 さらに米の使い道も食用や家畜・ペットの飼料用に限らず、甘味料の原料用、燃料用、工業用などもっと幅広く活用できるとし、わら、ぬかなども貴重な有機資源として商品化を図れるとした。

 意見交換会では飼料用米の使用、流通、消費、報道の各分野にかかわる4氏が発表。

 ㈱木村牧場(青森県/養豚)の木村洋文社長、日本放送協会(NHK)の佐藤庸介解説委員、コメ専門ライター(元米穀新聞記者)の熊野孝文氏、生活クラブ連合会の村上彰一会長が飼料用米の価値や、生産・流通を取り巻く諸情勢を報告。
 このうち木村社長は飼料用米のメリットを 

 ⓵国内産のためカビ毒事故がほぼない
 ⓶為替の変動(円安)に左右されない
 ⓷地産地消で輸送コストが安い
 ⓸肉の食味が良く脂質がまろやかになる
 ⓹日本で唯一自給できる飼料作物である――と説明。
 デメリットは、主食用米と競合することや、現状では国の財政負担がかかることとした。

 会場内の全員が発言できる討論会では、信岡理事が㈱秋川牧園の村田洋次長(㈱ゆめファーム取締役農場長)に対し「山口市での国産子実トウモロコシの生産状況は?」と質問。
 村田次長は、北海道と比べると思ったほどの収量は取れていないとし、「水田での生産となっている。山口は台風や豪雨などの自然災害も多く同時に病害虫やカビの被害が出やすいと聞いている。鳥獣害の被害があり、台風も多い山口市では一度倒れてしまうと刈り取りにくい。山口市の昨年の取り組みは計約17ヘクタール程度で、今年は倍増を予定して35ヘクタールほどで取り組んでいるようだが、まだまだ水田だけに課題は多い手放しで喜べる収量とは言いがたい」と答えた。

 会場内では出席者同士が意見交換する姿もみられ、農畜産関係者からは
 「畑地には水田や水路ほどの維持費がかからず、国もその場しのぎというか、予算がかからないとの理由で畑地化政策を選んでいるように感じる。そこに長期的な視点はあるのか」
 「日本人にとって食事の基本はコメ。そこだけは輸入頼みではいけない。いまの方針を進めると、最終的に消費者が苦しんでしまうと思う。関係者だけでなく、消費者にそのことを知ってもらいたい。日本の水田を守るには消費者の声が必要」などの声が聞かれた。

 同振興協会の若狹良治事務局長が閉会の辞で「私は国粋主義者ではないが、ここで瑞穂の国を滅ぼしていいのか。これは国産子実トウモロコシを否定しているのではなく、北海道や、高地の乾いたような場所でないと作りにくいということだ。コメは食用米、飼料用米だけでなく、いまは餅も年中売れる時代となっている。やはり日本にはコメであり、適材適所が大切と考える」との閉会の辞で散会した。
日本農業新聞 記事紹介
日本農業新聞 ホームページ紹介(有料)
農業協同組合新聞 記事紹介
農業協同組合新聞 ホームページ紹介

月刊 『日本の進路』 387 388 号 (2025年1月号) 
日本の進路 ホームページ紹介(有料)
農村と都市を結ぶ 記事紹介
月刊 農村と都市を結ぶ ホームページ紹介
鶏鳴新聞 記事紹介
鶏鳴新聞 ホームページ紹介(有料)
全国農業新聞 記事紹介
全国農業新聞 ホームページ紹介

 ▶ 鈴木宣弘さんの記事紹介ページ