第1回座談会の開催報告
米政策と飼料用米の今後に関する座談会(第1回)開催趣意書 ●と き:2020年11月17日(火)14:00~16:00 ●ところ:食糧会館(日本橋小伝馬町)5階A・B会議室 ●主催者:(一社)日本飼料用米振興協会 【プログラム】 1.開会のあいさつ(海老澤恵子・振興協会理事長) 2.座談会参加者の自己紹介(所属・事業内容・飼料用米との関係など) 3.信岡誠治先生(振興協会理事)による情勢分析並びに問題提起 4.座談会(進行:加藤好一・振興協会副理事長<生活クラブ連合会顧問>) 5.まとめと閉会のあいさつ 【座談会論点】(予定) 1.いまの米情勢をどうみているか? この事態を予想していたか? 2.おつきあいをしている産地・生産者はどんな様子か? 3.飼料用米を使う理由は? 飼料用米を給餌するメリットは? 4.飼料用米による「耕畜連携」という成果をどう評価するか? 5.飼料用米生産が2018年以降減産となったがその理由は? 6.飼料用米助成の見直し圧力(財務省)もありうるがどう思うか? ➡「日本農業過保護の虚構」(安達英彦・鈴木宜弘著)という問い 7.米政策・飼料用米政策はどういう改善の方向(短期・中長期)があるか? ➡ 主食用米の消費は確実に減り続けている =10㌧/年 8.日本農業の持続性を確保していくには? (関係者それぞれの役割は?) 9.新基本計画をどう評価し期待するか? <新基本計画の位置> ➡ 不可欠な点検・進捗管理・補強 ① 5年後の生産基盤の状態を想定すると作文に終わらせてはならない ② また安倍政権が進めた大型通商協定発効後の最初の計画である ③ 計画策定後に発生した新型コロナの影響は甚大で長期化する <座談会進行者の基本的な問題意識> (1)主食たる米、その生産と消費に対する国の責任放棄という問題が今回の 問題の背後にないだろうか? 消費者も単に価格が安いことだけを望んでい ない。生産の持続性や多面的機能、SDGs等に強い関心がある。 (2)そもそも米を基幹とする農業に導いたのは(米国と)この国の政治だ。 米以外は輸入する。現在はその米すら生産者の自己責任。この戦後農政の責 任が不明確だ。ゆえに「食料主権」という根本にあるべき哲学が見えない。 <参考> 鈴木宜弘・東大農学部教授の関連する問題提起 1.「日本農業過保護論の虚構」から ●(農業過保護論再燃の背景)GDPへの寄与が小さい農業は捨てて、他の輸出産業をもっと優遇しようという経済効率優先の国策がある。 ●日本の農業が決して過保護ではないことは〔…〕明らかだ。その最も雄弁な証拠は、今や先進国の中で群を抜いて低い37%という日本の食料自給率である。もし関税が高ければ、これほど輸入は増えないし、関税が低くても農家所得に十分な補填があれば、国内生産は増えるはずである。 ●世界的に最も自力で競争している〔過保護でない〕のが日本の農林水産業。その努力に報いる救済措置は、結果的に国民の食生活を守るためにある。それが過保護だと誤解されて、国民を敵に回してしまうのでは元も子もない。日常的な農家へのサポート体制を充実させるとともに、危機が起きたら最低限の補填が確実に届くように、日頃から制度を準備しておく必要がある。 2.「深刻なコメの危機とは」 から ●(悪循環の構造)「需要減の加速→米価下落→自主的生産調整がさらに難しくなり抜け駆け的な販売競争→さらに米価下がる→数年の平均より下がった分(の81%)だけ補填する収入保険では支えきれない→稲作農家の減少が加速し、全国で地域コミュニティが消滅していく→国民に十分なコメが供給できなくなる」という流れが加速。 ●最低限の穀物価格や乳製品価格(生乳価格)を支えるために政府が在庫を引き受ける政策をやめてしまったのは日本だけである。〔…〕 いまこそ、最低限の所得が確保できる差額補填と政府による販売調整=出口対策を、諸外国のように復活・充実しないかぎり、〔…〕 農村の疲弊は加速的に進みかねないことを直視すべきである。 飼料用米の給餌者に関わる問題意識 *専用品種の問題 ① 大型通商協定発効後に急増する畜産物輸入 *3年契約の問題 ➡ 飼料自給率向上を問う意味がなくなる ➡ つまり、飼料を国内で生産する意味がなくなる ② 新基本計画で提起された「国産自給率」47%とは何? ➡ 飼料は輸入でも国内で飼育・肥育している生産者の努力を評価 ➡ しかし裏返していえば、飼料自給率が100%でも、カロリーベースの食料自給率は47%にとどまる、お寒い実態だということ ③ 飼料用米の生産持続性の確保のためには、助成制度の問題とともに、多収化、 低生産コスト化の課題がある。これには各地の経験の蓄積や、研究機関等で の品種改良や技術開発の強化も必要だ。 ➡ だからといって、品種開発に生命工学(GMやゲノム編集)を用いられることは容認できない(生活クラブ) 飼料用米政策に関する諸改善策 以下は当振興協会の提案ということではなく、あくまで飼料用米政策の諸改善策に関するメモです。ただし当振興協会では、特には(3)と(4)をこの間主張してきましたが、最近(5)にも関心を広げているところです。 <改善の方向> ① 当面の問題から脱するために、需給調整を第一義とする短期的な改善策 ② 中長期的な安定性と納得性の確保のため、平時に検討・準備すべき改善策 (1)水田活用交付金の運用見直し(農水省案) <日本農業新聞11/12> ●産地単位で水田活用交付金や主食用・非主食用米の販売代金を共同(プール)計算できるようにするというもので、主食用・非主食用米の手取り格差を平準化し、作付け転作を促すのが狙いとされています。 (2)転作助成金を入り口ではなく出口で調整するようにする(参考) ●需給のミスマッチを回避し、需給のコントロールを容易にする改善策として、時に議論されています。 (3)飼料用米政策の持続性と安定性を確保する ●当振興協会では年来の主張として、飼料用米政策の恒久化・法制化を訴え続けています。当振興協会としては、まずはこれが必須だと考えています。 (4)飼料用米政策を裏づけのある「本作」として位置づけ明確化する ●当振興協会では設立時より、会の目標として「飼料用米生産の本作化」を掲げてきました。つまり、飼料用米を主食用米の従属的な役割にとどめるのではなく、国産自給飼料作物の基幹として明快・明確に位置づけるべきだという主張です。 ●これによって、「転作」という主食用米の生産調整の「手段」(需給調整と価格維持)ではなく、日本食料政策の根幹(自給率向上)としての積極性が鮮明になり、国民の納得性(食料主権に基づくそれに大いに資する飼料用米生産という認識)も得られ、理解も広がると考えています。 (5)飼料用米活用が畜産生産者のインセンティブになる政策を並列化する ●これまでのところ、飼料用米政策はもっぱら稲作経営の問題に限定されて います。今後は畜産経営に対して、飼料用米を活用することによってインセンティブが付与されるような方策も検討の余地がないでしょうか。 以上 |
司会進行について 加藤好一
問題提起 信岡誠治
飼料用米の取り組みについて 宮澤哲雄
飼料用米による資源循環型農業の確立を 澤田一彦
現代農業における飼料用米の位置づけ 村田 洋
業界紙掲載記事紹介
ビデオ収録形式で開催しました。 |
第5回 コメ政策と飼料用米に関する意見交換会2020 第1回 座談会 |
2020年11月17日 |
会場の関係で報道関係者に傍聴をお願いしました。 参加状況 報道関係者10名。 |
開催要領 開催月日:2020年11月17日(水)14:00~16:50 開催会場:食糧会館 中央区日本橋小伝馬町15-15 会議室(5階A/B会議室) |
第5回 コメ政策と飼料用米に関する意見交換会2020
第1回 座談会
右側 挨拶をする海老澤理事長
左から 信岡さん、澤田さん、宮澤さん、加藤さん
傍聴された報道機関の皆さん 左側はビデオ撮影者(森岡さん)