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国民飢餓の危機 令和のコメ騒動の深層 連載1~9回(完了)

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食料自給の確立へ
2024/12/29 2024/12/29 農業
農業・農村・食料を守る政策実現に機運高まる
東京大学特任教授・名誉教授、食料安全保障推進財団理事長 鈴木 宣弘

「広範な国民連合第26回全国総会」のご成功に心からお祝い申し上げます。
今、「住むのが非効率な」農業・農村の崩壊を加速させ、人口の拠点都市への集中と一部企業の利益さえ確保すれば「効率的」だとする動きも強まっているなか、文字通り「広範な国民連合」が全国各地の政治・行政と市民・農民の力を結集し、日本の地域社会と子どもたちの未来を守る最大の使命を担っております。
現に、国民連合による食料自給率向上の自治体議員連盟の尽力は、農業・農村を守り、食料を守ることの重要性を超党派の国民運動として盛り上げる原動力となっております。
私自身も、国政レベルでも、ほぼ全政党でお話をし、食料安全保障推進法(仮称)に基づく①農地を守る基礎支払い、②生産者・消費者の双方を支援するコストと販売価格との不足払い、③備蓄・援助のための政府買い入れの拡大、などの必要性について、党派をまたいだ強い賛同を得ております。
今まさに、広範な国民連合による日本の地域社会を守る政策提案が、国政レベルでも喫緊の政策として実現できる機運が党派を超えて高まっております。食料自給確立の自治体議員連盟による全国津々浦々からのうねりづくりが国政を動かす最大の原動力になります。この機を逃すことなく、さらなる結集と活動の強化に取り組んでまいりましょう。
国家観なき歳出削減からの脱却
政策実現へ超党派の国民運動を
鈴木 宣弘
最近、財政当局の農業予算に対する考え方が示された。その骨格は、①農業予算が多過ぎる、②飼料米補助をやめよ、③低米価に耐えられる構造転換、④備蓄米を減らせ、⑤食料自給率を重視するな、といったものである。そこには、歳出削減しか念頭になく、現状認識、大局的見地の欠如が懸念される。
1970年の段階で1兆円近くで防衛予算の2倍近くだった農水予算は、50年以上たった今も2兆円ほどで、国家予算比で12%近くから2%弱までに減らされてきた。10兆円規模に膨れ上がった防衛予算との格差は大きい。
軍事・食料・エネルギーが国家存立の3本柱ともいわれるが、なかでも一番命に直結する安全保障(国防)の要は食料・農業だ。その予算が減らされ続け、かつ、世界的食料争奪戦の激化と国内農業の疲弊の深刻化の下で、まだ高水準だという認識は国家戦略の欠如だ。
中国は14億の人口が1年半食べられるだけの食料備蓄に乗り出している。世界情勢悪化のなか、1・5カ月分程度のコメ備蓄で、不測の事態に子どもたちの命を守れるわけがない。今こそ総力を挙げて増産し備蓄も増やすのが不可欠なときに備蓄を減らせという話がなぜ出てくるのか。
「いつでもお金を出せば安く輸入できる」時代は終わった。今こそ、国民の食料は国内で賄う「国消国産」、食料自給率の向上が不可欠で、投入すべき安全保障コストの最優先課題のはずなのに、食料自給率向上に予算をかけるのは非効率だ、輸入すればよい、という論理は、危機認識力と国民の命を守る視点の欠如だ。
そして、これらの考え方が25年ぶりに改定された食料・農業・農村基本法にも色濃く反映されていることが事態の深刻さを物語る。
この状況は絶望的にも見える。
農業・農村を守る政策
実現に新たな展望
しかし、この局面を打開できる希望の光も見えてきている。
かつて2009年、当時の石破茂農水大臣は、筆者が08年に刊行した『現代の食料・農業問題―誤解から打開へ』(創森社)を三度熟読され、この本を論拠にして農政改革を実行したいと表明された。
拙著での提案、および09年9月15日に石破大臣が発表した「米政策の第2次シミュレーション結果と米政策改革の方向」の政策案の骨子は、
「生産調整を廃止に向けて緩和していき、農家に必要な生産費をカバーできる米価(努力目標)水準と市場米価の差額を全額補てんする。それに必要な費用は3500~4000億円で、生産者と消費者の双方を助けて、食料安全保障に資する政策は可能である」
というものだった。これは、その直後に起こった政権交代で、民主党政権が提案していた「戸別所得補償制度」に引き継がれることになった。
食料安保確立基礎支払いと食料安全保障推進法(仮称)
そして筆者は、スイスの農業政策体系に着目した。食料安全保障のための土台部分になる「供給補償支払い」の充実(農家への直接支払いの1/3を基礎支払いに集約)と、それを補完する直接支払い(景観、環境、生物多様性への配慮などのレベルに応じた加算)の組み合わせだ。
それを基にして、「食料安全保障確立基礎支払い」として、普段から、耕種作物には農地10a当たり、畜産には家畜単位当たりの「基礎支払い」を行うことを提案した。その上に多面的機能支払いなどを加算するとともに、生産費上昇や価格低下による赤字幅に応じた加算メカニズムを組み込む。
かつ、食料需給調整の最終調整弁は政府の役割とし、下限価格を下回った場合には、穀物や乳製品の政府買い入れを発動し、備蓄積み増しや国内外の人道支援物資として活用する仕組みを整備することも加えた。こうしてこれらをまとめた超党派の議員立法「食料安全保障推進法」(仮称)の可能性を提起した。
農家だけを助ける直接支払いではなく、消費者も助け、国民全体の食料安全保障のための支払いであることを理解しやすくする意味で「食料安全保障確立基礎支払い」というネーミングも重要と考えた。
筆者が理事長を務める食料安全保障推進財団も活用し、各方面に働きかけてきた。
超党派で政策実現の機運
全国各地での月20回前後の講演に加え、ほぼ全ての政党から勉強会の要請があったので、各党で話をさせていただいた。国民民主党の勉強会では、この考え方を取り入れて政策を組み立てたいとの賛同をいただいた。自民党(積極財政議員連盟)、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、日本維新の会、社民党、参政党など、ほぼ全ての政党から基本的な方向性に強い賛同をいただいたと理解している。
こうしたなかで超党派の協同組合振興研究議員連盟がこれに着目してくれた。事務局長の小山展弘議員(立憲民主党)を中心に内閣法制局とも打ち合わせを重ね、自民党の積極財政議員連盟の支柱である城内実議員(現・経済安全保障大臣)も賛同してくれ、議員連盟会長の森山裕議員(現・党幹事長)にも話をさせていただいた。
以上からわかるように、農業・農村を守る政策の方向性は与野党を問わず収斂してきている。09年に石破大臣が発表した農政プラン、戸別所得補償制度、食料安保確立基礎支払いの基本概念には共通項がある。
与野党が拮抗する政治情勢下で、こうした政策を超党派の国民運動で実現できる機運が高まっていると思われる。期待したい。

食料・農業危機打開、食料安全保障確立の政策提案
地域に食料安全保障推進議員連盟をつくり政府を動かす
東京大学大学院教授 鈴木 宣弘

広範な国民連合第25回全国総会(昨年11月20日)で鈴木宣弘東京大学教授は、食料・農業危機打開、食料安全保障確立の政策を提起され、地域に食料安全保障推進議員連盟をつくり、政府を動かす運動を提唱された。統一地方選への重要な問題提起である。(見出しとも文責編集部)
国内農業はコスト高で価格が上がらないから倒産しそうだと言われています。危機に瀕している国内の農業を支える赤字補塡をやらない限り、国民の命を守れないということが政府はなぜ分からないのかと思います。
政府は、農業基本法の見直しもやると言っていますが、自給率より自給力だとか、いざというときには日本中に芋を植えて、それで飢えをしのげば何とかなるというような議論をしてみたり、輸出力の強化だ、デジタル農業で頑張るぞとか、そういう空虚なアドバルーンを揚げたりしています。
アメリカの大学の試算では局地的な核戦争が起きたら、直接的な被爆による死者は2700万人ですが、物流停止で2年後には餓死者が2億5500万人も出る。その約3割、7200万人が日本人という衝撃的な計算が出ています。
私は12年前から、食料とその生産資材の自給率が低い日本はいざというときに命を守れないから、早く対策をしなければいけないと言い続けてきました。「有事」が始まっているとき、日本がどれだけ脆弱な構造の上にあるかは考えてみたら当たり前です。
今農家は、肥料は2倍、餌は2倍、燃料は3割高でコストが上がっているのに、農産物価格は低いままで、本当に倒産の危機にいます。これを皆の力でなんとか支えない限り、日本と地域の未来はないというのが今の状況だと思います。
乳製品と米のミニマム輸入をやめるべき
東北地方では、米の10アール当たり収量は数年前と比べて減っているが、支出は肥料などが上がって1・5倍に増え、数年前はなんとか10アール当たり3万円くらい残せたのが、今は残らず赤字で、ただ働きという状況です。
酪農畜産は7重苦(生産資材暴騰、農産物販売価格の低迷、副産物収入の激減、強制的な減産要請、乳製品在庫処理の多額の農家負担金、大量の乳製品輸入、他国で当たり前の政策が発動されない)とも言われる困難を抱え、深刻な事態が進んでいます。本当は今しっかり増産して危機に備えなければいけないときに「搾るな、牛殺せ」という異常事態です。しかも、乳製品在庫の処理を酪農家になんと牛乳1キロ当たり、去年でも2円、今年は2円70銭も負担させて、北海道だけで去年で100億円、今やむなく廃業するかもしれないという農家に負担させています。
原因は大量の輸入です。世界でもこんなに輸入している国はありません。日本は1993年のウルグアイラウンド合意で、コメを77万トン(うちアメリカから36万トン)、乳製品13・7万トン(生乳換算)をミニマムアクセス枠として毎年輸入し続けています。日本以外にそんなことをしている国はありません。背景には、アメリカとの密約があります。
農家が廃業の危機に直面している今、意味のない輸入をやめればかなり解決できます。アメリカから無理やり買わされ、そのために無駄な税金を使っています。
財政での補塡が不可欠
その税金を農家への対策として使うべきです。
具体的に計算してみると、米1俵(60キログラム)の米価が9000円くらいになってしまっている現状と必要とされる米価1万2000円との差額を700万トンに補塡すると、3500億円くらいになります。酪農家さんの場合は、生乳キログラム当たり少なくとも30円は足りないということで全酪農家にそれを補塡するとすれば1800億円です。
これは一つの例です。具体的にどれくらい必要かを計算して、しっかり支払えるようにしなければいけない。農水省予算は、財務省が2・3兆円から微調整しかできないと決めています。それでは話が進みません。
私は超党派の議員立法で、食料安全保障推進法(仮称)というようなものを早急に成立させて、年数兆円規模の予算措置を早急に発動できるようにすることが重要ではないかと考えます。
食料安全保障推進法(仮称)を
食料安全保障を確立するため普段から、耕種作物には10アール当たりいくら、家畜単位当たりいくらという形の基礎支払いを行う。スイスは基礎部分として供給補償支払いという形で皆に払う、その上で条件に応じて例えば中山間地になるとその支払い額を上乗せしていくという考え方です。日本でもこういう国を参考に制度設計するといいのではないかと思います。
それからもう一つは、政府が需給の最終調整弁の役割を果たす。ある下限価格を下回った場合に政府の介入が発動される。そして、国内外に人道支援物資として買い上げた農畜産物を活用する、そういう仕組みを取り入れる。さらに今回のように赤字が非常に激しく大きくなってしまうときには、発動条件をしっかりと明確にした上でさらなる赤字補塡措置や上乗せできるような仕組みにしておく。
他国と比べて日本で食料安全保障に対して関心が薄いのは、教育の差も大きいと思います。かつての食糧難の経験についての記述も日本では教科書から消されてきたという問題もあります。今井和夫宍粟市議会議員から重要なことではないかとご提案もありました。22年8月に川崎市で開催された全国地方議員交流研修会で、福島県喜多方市の小学校で「副読本に基づく必修授業」といういい事例報告がありました。しっかりと子どもたちに食料や農業の重要性を考えてもらう授業をするというのは非常に重要なポイントだと思います。
早くしないと間に合いません。国会議員の中でも重要だから食料安全保障議員連盟をつくっていこうという声も出てきています。それぞれの地域の地方議員の皆さんがリーダーになって食料安全保障推進議員連盟という形を地域ごとにつくっていただいて、それで国政にも呼びかけをしていく。このような考え方で皆さんが動いていただけると大きな流れになるのではないかという提案です。
私も食料安全保障推進財団を立ち上げて、こういうような動きをバックアップすることを考えております。先日、講演で宮城県大崎市におじゃましましたが、そこでは超党派で農山村振興議員連盟をつくって頑張っておられました。(別掲関連記事)
広範な国民連合に結集する皆さんが食料安全保障推進法(仮称)の中身をできる限り具体化し、それに基づいてつながりも広げていただきたいと思います。

特集 広報・調査部
2022年12月12日(vol.1020)
皆で考えよう 日本の食料安全保障 東京大学大学院農学生命科学研究科 鈴木宣弘教授に聞く
運命共同体として支えあい、生産者を守る

鈴木宣弘教授
2022年に入ってから食料品の値上がりが続いています。今、食や農の現場では何が起きているのか、私たちができることは何だろうか――。東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授に話を聞きました。
―― 今、食や農の現場で起きている状況をどのように見られていますか。
私は「クワトロショック」と呼んでいますが、まず一つは新型コロナで物流が滞り、まだ回復していません。二つ目、中国での需要が増えてきて、今までのように食料をどんどん輸入するということが難しくなってきています。一方、三つ目として異常気象が当たり前になり、世界中で干ばつや洪水などが頻発し供給が不安定になっています。そして四つ目、とどめを刺すかのようにウクライナ紛争が起きてしまいました。今、世界中で食料や生産資材の争奪戦が非常に激しくなってきています。
物流が止まる要因は三つあると考えます。一つはロシアのように「敵国には売らないよ」と食料を武器とする状況が起きていますよね。そしてもう一つ、ウクライナは生産国ですが、紛争で種まきもできない上に、出荷しようにも海上封鎖で出せなくなり、物理的にどうしようもない状況になっています。一番深刻なのは、それを見て小麦の生産量世界2位のインドのような国が、「自国民を守るために外に売っている場合ではない」と防衛的に輸出を止めたりしており、そのような国が30カ国ほどあります。また、船賃が上がったり、石油の高騰でトウモロコシや大豆などがバイオ燃料にも使われるため穀物価格が暴騰したりといった状況を複雑にしています。さらに深刻なのが、化学肥料の原料です。これまでほとんど輸入に頼っていたことが非常に大きな問題として顕在化してきました。
国内の農家は肥料代2倍、餌代2倍、燃料代3割高と生産コストが急騰していますが、一方で国産農畜産物の価格は安いまま。価格転嫁ができず廃業に追い込まれる農家も出てきています。
―― 直近のわが国の食料自給率が38%と発表されました。
(自給率の計算にカウントされている飼料を除く)生産資材の自給率を考えると、実際にはもっと低いわけですよね。種の自給率も低く、野菜の種は1割くらいしか国内で作っていません。野菜の自給率は80%といっているけれど、種が手に入らなければ8%しか作れないということです。化学肥料が止まったら生産も半減します。それも含めると実質的な食料自給率は1割くらいしかないかもしれない。それほど私たちは海外からモノがはいってこなくなったときに命を守れないような、とても脆弱(ぜいじゃく)な、砂上の楼閣(ろうかく)に生きているということを今こそ認識しなければいけないと思います。
―― まさしく食料の危機に直面している状況です。
スーパーに行けば少々高いけれどまだモノがあふれているので消費者はそんなことはないと思うかもしれませんが、お金を出せば自由に輸入できるということを前提にした食の安全保障はもう破綻したと考えるべきです。自国で生産できれば良いが、今日本の農家も存続の危機に立たされています。農家がこれ以上大変な状況になったら、自分たちの命に関わる状況が起こるかもしれない。生産者から関連組織や企業、消費者までを運命共同体として、私たちが今、生産者を守らなければいけない状況にきていると思います。国産農畜産物をもっと消費して支えるとか、再生産可能な価格で支えたいという行動を、消費者自身も、それから関連業界も起こさないといけない。
―― 生産者を助け、食の安全保障につなげるにはどのような行動が求められるのでしょうか。
安いからと輸入品に頼っていたらいざというときに命を守れません。だから消費者が今やるべきことは自分が買うもの、外食や中食、加工品も含めて国産に切り替えるということです。国産を使用した商品、販売しているルートをしっかりとみんなで確認する、そして国産をちゃんと使っている食べ物を選択する。
また、メーカーなど供給側も国産を使っている商品をちゃんと消費者に届けるための商品づくり、原料を国産に切り替えることで消費者も国産を消費できます。また、使用原料が国産であることが店頭で分かるようにすることも重要です。
安全保障というのは、武器以前にまず食料を考えるべきです。いざというときに食料をしっかり国民に供給できるかどうか。国内の生産コストが少々高いように思えても、普段からみんなで支えて危機に備えるということは安全保障につながります。そのためのコストを負担することはとても重要になります。
―― 供給する側も、国産、地元産の良さを消費者にしっかり伝えることが大切ですね。
外国産には日本で認められていない農薬を使用しているものがあるなど、正しい情報を消費者に共有することで国産の安全性が伝わり、国産を選ぶことにもつながります。「命を守るためのコスト」をいかにちゃんと負担するか、そしてそれを理解できるような情報を共有するということは非常に重要だと思います。
―― 今年3月に(一財)食料安全保障推進財団(以下、財団)を設立されました。目的と狙いを教えてください。
生産者の思いや今の食料、農業の情勢について、セミナーなどを通じて消費者に伝え理解醸成を図ることが大きな目的です。農協も地域住民や消費者に伝えたいことがあるが、市民向けのセミナーを実施するのが難しいという状況もあります。そんなときは財団を通じて機会を作ることは可能なので、ぜひ依頼してもらいたいと思っています。
また、「食料安全保障推進法制定の推進」も活動の一つとして位置付けています。米の価格が下がり差額を米農家に補填(ほてん)しようとしても、今の日本の予算の仕組みでは難しいのが現状です。片や、防衛費は2倍にしてもいいのではないかという議論もある。安全保障は何より食料を守るべきなので、省庁ごとによる枠組みを取っ払い、すぐに国が予算を出せるようにするための法律が必要だと考えています。
そして、賛同の輪を広げることで集まった資金をもとに、運命共同体として農業の危機、食料危機を解決するため、生産者や消費者など困っている人を財団が支援することもできるのではないかということも考えています。
―― JAグループができることは何でしょう。
地元のJAはまさに生産者に一番近い組織として今、何ができるか、何をやろうとしているかの意思を具体的に農家に伝える必要があると思っています。農協は農家のために最後のとりでになるつもりで最後まで頑張るということをちゃんと伝えて、それを行動、実践に移すことが重要で、全国組織も同様です。また、生産コストの高騰が価格転嫁されないなか、農家が自分で価格を決めて販売できる直売所のシステムを農協や全農の流通の中でネットワーク化し、広げていくことは非常に重要な取り組みになると期待しています。
財団URL https://www.foodscjapan.org/
| 食料・農業危機打開、食料安全保障確立の政策提案 地域に食料安全保障推進議員連盟をつくり政府を動かす 東京大学大学院教授 鈴木宣弘 広範な国民連合第五回全国総会(2022年11月20日)で鈴木宣弘東京大学教授は、食料・農業危機打開、食料安全保障確立の政策を提起され、地域に食料安全保嘩推進議員連盟をつくり、政府を動かす運動を提唱された。統一地方選への重要な問題提起である。(見出しとも文責編集部) 国内農業はコスト高で価格が上がらないから倒産しそうだと言われています。 危機に瀕している国内の農業を支える赤字補填をやらない限り、国民の命を守れないということが政府はなぜ分からないのかと思います。 政府は、農業基本法の見直しもやると言っていますが、自給率より自給力だとか、いざというときには日本中に芋を植えて、それで飢えをしのげば何とかなるというような議論をしてみたり、輸出力の強化だ、デジタル農業で頑張るぞとか、そういう空虚なアドバルーンを揚げたりしています。 アメリカの大学の試算では局地的な核戦争が起きたら、直接的な被爆による死者は2700万人ですが、物流停止で2年後には餓死者が2億5500万人も出る。 その約3割、7200万人が日本人という衝撃的な計算が出ています。 私は12年前から、食料とその生産資材の自給率が低い日本はいざというときに命を守れないから、早く対策をしなければいけないと言い続けてきました。 「有事」が始まっているとき、日本がどれだけ脆弱な構造の上にあるかは考えてみたら当たり前です。 今農家は、肥料は2倍、餌は2倍、燃料は3割高でコストが上がっているのに農産物価格は低いままで、本当に倒産の危機にいます。 これを皆の力でなんとか支えない限り、日本と地域の未来はないといのが今の状況だと思います。 乳製品と米のミニマム輸入をやめるべき 東北地方では、米の100アール当たり収量は数年前と比べて減っているが、支出は肥料などが上がって1・5倍に増え、数年前はなんとか10アール当たり3万円くらい残せたのが、今は残らず赤字で、ただ働きという状況です。 酪農畜産は7重苦(生産資材暴騰、農産物販売価格の低迷、副産物収入の激減、強制的な減産要請、乳製品在庫処理の多額の農家負担金、大量の乳製品輸入、他国で当たり前の政策が発動されない)とも言われる困難を抱え、深刻な事態が進んでいます。 本当は今しっかり増産して危機に備えなければいけないときに「搾るな、牛殺せ」という異常事態です。 しかも、乳製品在庫の処理を酪農家になんと牛乳1キロ当たり、去年でも2円、今年は2円70銭も負担させて、北海道だけで去年で100億円、今やむなく廃業するかもしれないという農家に負担させています。 原因は大量の輸入です。世界でもこんなに輸入している国はありません。 日本は1993年のウルグアイラウンド合意で、コメを77万トン(うちアメリカから36万トン)、乳製品13.7万トン (生乳換算)をミニマムアクセス枠として毎年輸入し続けています。 日本以外にそんなことをしている国はありません。 背景には、アメリカとの密約があります。 農家が廃業の危機に直面している今、意味のない輸入をやめればかなり解決できます。 アメリカから無理やり買わされ、そのために無駄な税金を使っています。 財政での補填が不可欠 その税金を農家への対策として使うべきです。 具体的に計算してみると、米1俵(60キログラム)の米価が9000円くらいになってしまっている現状と必要とされる米価1万2000円との差額を700万トンに補填すると、3500億円くらいになります。酪農家さんの場合は、生乳キログラム当たり少なくとも300円は足りないということで全酪農家にそれを補填するとすれば1800億円です。 これは一つの例です。 具体的にどれくらい必要かを計算してしっかり支払えるようにしなければいけない。 農水省予算は、財務省が2・3兆円から微調整しかできないと決めています。 それでは話が進みません。 私は超党派の議員立法で、食料安全保障推進法(仮称)というようなものを早急に成立させて、年数兆円規模の予算措置を早急に発動できるようにすることが重要ではないかと考えます。 食料安全保障推進法(仮称)を 食料安全保障を確立するため普段から、耕種作物には100アール当たりいくら、家畜単位当たりいくらという形の基礎支払いを行う。 スイスは基礎部分として供給補償支払いという形で皆に払う、その上で条件に応じて例えば中山間地になるとその支払い額を上乗せしていくという考え方です。 日本でもこういう国を参考に制度設計するといいのではないかと思います。 それからもう一つは、政府が需給の最終調整弁の役割を果たす。 ある下限価格を下回った場合に政府の介入が発動される。 そして、国内外に人道支援物資として買い上げた農畜産物を活用する、そういう仕組みを取り入れる。 さらに今回のように赤字が非常に激しく大きくなってしまう時には、発動条件をしっかりと明確にした上でさらなる赤字補填措置や上乗せできるような仕組みにしておく。 他国と比べて日本で食料安全保障に対して関心が薄いのは、教育の差も大きいと思います。 かつての食糧難の経験についての記述も日本では教科書から消されてきたという問題もあります。 今井和夫宍粟市議会議員から重要なことではないかとご提案がありました。 22年8月に川崎市で開催された全国地方議員研修会で、福島県喜多方市の小学校で「副読本に基づく必修授業」といういい事例がありました。 しっかりと子どもたちに食料や農業の重要性を考えてもらう授業をするというのは非常に重要なポイントだと思います。 早くしないと間に合いません。 国会議員の中でも重要だから食料安全保障議員連盟をつくっていこうという声も出ています。 それぞれの地域地方議員の皆さんがリーダーになって食料安全保障推進議員連盟という形を地域ごとにつくっていただいて、それで国政にも呼びかけをしていく。 このような考え方で皆さんが動いていただけると大きな流れになるのではないかという提案です。 私も食料安全保障推進財削を立ち上げて、こういうような動きをバックアップすることを考えております。 先日、講演で宮城県大崎市にお邪魔しましたが、そこで農山村振興議員連盟をつくって頑張っておられました。 広範な国民連合に結集する皆さんが食料安全保障推進法(仮称)の中身をできる限り具体化し、それに基づいてつながりも広げていただきたいと思います。 食料安全保障推進法 (仮称) の骨子 ◆食料安全保障を強化する。 具体的には、輸入が途絶しても国内生産で国民に食料を供給できる体制を確立するため、食料自給率を高める。 ◆そのために、数兆円規模に農業振興予算を増額し、「食料安全保障確立基礎支払い」として、普段から、耕種作物には農地 10a当たり畜産には家畜単位当たりの基礎支払いを行う。 ◆食料需給の最終調整弁は政府の役割とし、下限価格を下回った場合には、穀物や乳製品の政府買い入れが発動され、国内外の人道支援物資として活用される仕組みを整備する。 ◆さらに、2022年のような農業経営危機においては、発動条件を明確にした緊急の赤字補填措置が上乗せできるように定める。 |