米、コメ問題

2025年1月26日

日本農業新聞 2025/2/12
【今よみ】政治 経済 農業
米価高騰〟の深層
東京大学特任教授・名誉教授 鈴木 宣弘


薄く広げた交付金には限界

 米は十分あるが、問題は流通にある」と政府は米価高騰〟の原因は流通業界の「買い占め」だと言って、まだ「米は余っている」と強弁する。
 しかし、市場関係者が「不足感」を感じているから、買いだめが起こるわけで、足りていると政府が言い張るのは無理がある。
 水田つぶし政策と時給が10円しかないような農家の疲弊暑さの影響(低品質米の増加)も加わって主食米供給が減り過ぎている。
 米価が上がったといっても農家からすると30年前の価格に戻っただけで、やっと一息つけるかという程度で、すでに疲弊している現場の生産が一気に増えるのは難しいと流通業界も見込んでいる。
 水田をつぶして現場農家の疲弊を放置する政策が続けば、「米不足」は続く。
 「農協が米価格をつり上げている」との見解も実態と乖離(かいり)している。 
 農協は今、米が集まらず困っている。 
 共販で、概算金60㌔当たり1万8000円、後で同5000円追加払いの見込みでも、農家は同2万2000円とかで即買いに来る業者に売ってしまいがちになる。
 根底にあるのは、農家が赤字でやめていくのを放置して、田んぼをつぶせば一時金(手切れ金)だけ払うからもうやめなさい、と誘導して、農村現場を苦しめてきたツケである。
 農業予算を削りたい財政当局の強い意志がある。
 需要が減るから生産減らし続けていくという政策を続けたら「負のスパイラル」で、日本の稲作と米業界は縮小していくだけである。
 日本農業の根幹と日本人の主食が失われ、一時的に輸入に頼っても、それが濡れば日本人は飢える。
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 日本の水田をフル活用すれば、今の700万から1300万、に米生産を増やせる。
 米需要は備蓄用、パン・麺用、飼料用、貧困支援用と広がっている。
 どんどん増産できるように農家支援を拡充すれば、米価格は上がり過ぎずに消費者も助かる。
 そして、需要を創出するために財政出動する。
 そうすれば縮小でなく好循環で市場拡大できる。
 財政当局に農水予算の枠を抑えられたまま、水田活用交付金の組み替えで農地当たり基礎支払いを広げる方向性が示されたが、それでは10当たりの極めて少額の支援に薄まるだけで何もならない。
 「財源の壁」の克服なくして事態の改善はできない。