2025年1月22日 理事会資料
食料・農業・農村政策審議会 企画部会(第116回)
目次
2025年1月1日 年頭所感
20250101 財政審予算建議は農政をどこに誘導しようというのか
東京大学名誉教授谷口信和
農村と都市をむすぶ 2025 米の指数先物取引の開始をめぐって座談会 20250101NO874
20230101 求められる飼料用米政策の一貫性と持続性 ― 生産・流通現場の実態からみた課題
李 侖美・谷口信和
日本農業新聞 2025年1月8日
[論説]米の流通自由化30年 問われる国の安定供給
国が米の流通を厳格に管理する食糧管理法(食管法)の廃止から30年。流通が自由化されて以来、産地は売れる米作りを進めるが、低価格競争や需要減の流れにあらがえず生産基盤は弱体化する。「令和の米騒動」を経て、米の安定供給に向けた国の姿勢が改めて問われている。
食管法の時代(1942~95年)は、国への全量売り渡し義務が課され、買い入れ価格も国が決めていた。だが財政負担や、ヤミ米の増加を受けて69年、自主流通米制度を導入。95年の食糧法、2004年の改正食糧法の施行で米流通は民間に委ねられた。
流通自由化に伴う最大の弊害は米価の低迷だろう。大型スーパーが、個人の米穀店に代わり販売の主役となって以来、価格競争が激化。北日本の大冷害や東日本大震災の混乱を除けば、米価は総じて下落傾向となった。
一方、米の消費量は、食生活の欧米化や単身世帯の増加で減り続け、産地は売れる米を作ろうとブランド米の開発を進めた。結果、「コシヒカリ」や「あきたこまち」「ひとめぼれ」が台頭、北海道「ゆめぴりか」、山形「つや姫」が追い、各産地で独自品種が誕生した。米の食味向上につながったものの、産地に閉塞感が漂う展開となった。
食管法は廃止から30年たってもなお、産地からは復活を求める声が根強い。復活は難しいが、国による積極的な関与を求めている表れだ。
米の流通自由化以降、国は財政負担の軽減へ、価格を市場に委ねる政策を推し進めてきた。だが、大手小売りや外食によるバイイングパワーを前に価格は低迷、農家は再生産できない状況に陥った。頼みの経営安定対策も時代によって変化し、経営を支えきれていない。直近の米価は回復してきたものの、肥料など資材高騰が長期化し、経営を圧迫する。再生産できる所得をどう確保するか、直接支払いの強化を含め、国による具体策が問われている。
米の供給基盤はもろい。昨年は「令和の米騒動」が起きた。一部では転作による生産調整が米不足を起こしたとする見方があるが、正確ではない。政府が米流通を自由化した結果、供給力が落ち流通網にほころびが生じている。
生産現場では高齢化や担い手不足が深刻化し、カントリーエレベーターや水利施設は老朽化、更新は待ったなしだ。異常高温で病害虫が多発し、資材価格も高止まりする。安定供給のためのコスト、労力は増大する。
政府は27年度以降の水田政策見直しを掲げる。安値競争を続けていては農業は衰退し、食料安全保障は確保できない。米の安定供給へ、国の積極的な関与を求めたい。
日本農業新聞 2025年1月7日
今よみ
負担強いる生産調整 安保考え増産への転換を

日本農業新聞 2025年1月7日 [今よみ]
安保考え増産へ転換を
負担強いる生産調整
東京大学特任教授・名誉教授 鈴木宣弘氏
輸入依存度が高いということは国内農業生産は過剰でなく足りていないのだ。国内生産の増大に全力を挙げ、輸入から置き換え、備蓄も増やし、不測の事態に子どもたちの命を守るのが「国防」だ。
なのに生産者のセーフティーネット構築は議論せずに、相変わらず「米は過剰」とする政府の需給見通しで減産を要請している。猛暑が常態化して低品質米が増えていることは作況指数に反映されない。だから、生産量を10万トン減らすと減らし過ぎになる。米需要は減るとの見通しには、安全保障上の需要が欠落している。91万トン、消費の1・5カ月分で不測の事態に国民の命は守れない。
小麦やトウモロコシの輸入が減るリスクも高まる中、米のパンや麺、飼料を増やすのは国家戦略的な安全保障上の米需要で、フードバンクや子ども食堂を通じた米支援も必要だ。それらを合わせたら米需要は莫大(ばくだい)で、生産調整をしている場合ではない。
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さらに、酪農家が1万戸を切り、減少の加速が問題になる最中、脱脂粉乳の在庫が多いから生産抑制だとして、それに協力せずに系統外に売る酪農家には補助金を出さないという方向性が出ている。
発想が間違っている。今こそ、酪農家が自由に増産できるようにするのが不可欠だ。国内生産が多過ぎるのでなく、輸入が多過ぎるのだ。他国のように脱脂粉乳とバターの在庫を政府が持ち、需給状況に応じて過剰時に買い入れ、国内外への援助にも活用し、不足時に放出すれば、わずかな民間在庫増加でこんなに酪農家に負担を押し付ける必要などない。
酪農家のコストに見合う乳価に届いていない分は海外のように補填(ほてん)して、酪農家の減少を食い止めなくては、本当に子どもたちに牛乳が飲ませられなくなる。
輸入が8割を占めるチーズ向け生乳を増やす内外価格差補填で大幅に国産へ置き換えができるが、それにかかる財政負担はオスプレイ1機の購入代金が220億円とすれば、その半分相当を酪農家あるいはメーカーに補填するだけでいい。
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食料・農業・農村を守るのは、国民の命を守る安全保障のコストだと認識すべきだ。それを出し渋り、農家を苦しめ国民を苦しめる愚かさに一刻も早く気付いてほしい。
日本農業新聞:論説 JAと生協が提携 【[論説]作る人と食べる人 対等互恵の関係築く年に】
| 日本農業新聞 2025年1月5日 参院選控え議論加速 農政展望2025 2025年は、3月に改定する食料・農業・農村基本計画が農政の最大の焦点だ。 生産費を考慮した農畜産物の価格形成を巡る法案などの国会審議も予定される。衆院で与党が過半数を割り込む中、与野党がどう合意形成を図るか注目される。 夏には参院選を控え、農政を巡る論戦も熱を帯びそうだ。 基本計画 3月に改定 自給率目標が論点に 基本計画は、食料・農業・農村基本法に基づき、中長期の農政の方針や具体策を示す。 今春に策定するのは、昨年の通常国会で四半世紀ぶりに改正された基本法に基づく初めての計画となる。 食料自給率など各種目標が論点の一つだ。改正基本法は、向上や改善を念頭にこれらを定めると明記。 政府は現在、カロリーベース自給率で45%の目標を掲げる。 食料安全保障が「わが国にとって極めて大切な政策課題」(自民党の森山裕幹事長)となる中、新目標の水準が問われる。 一方、財務省の財政制度等審議会は昨年、自給率を「過度に重視することは不適当」だとする意見書を加藤勝信財務相に提出した。 既に他国との食料の調達競争で「買い負け」する例もある中、自給を重視しない考え方が政府内にも存在。目標設定の議論の行方には不透明感もある。 基本計画の改定と並行し、水田政策の見直しも検討される。 政府は27年度以降、「安定運営」できるようにしたい考え。主食用米の需給安定へ、麦などへの転作を支える「水田活用の直接支払交付金」の財政負担が増していることが背景にある。 江藤拓農相は昨年の臨時国会で、同交付金について「根本的に見直す」と表明。 森山氏も「全般的に直接支払いの検討を進めなければならない」としており、着地点が注目される。 自民は昨年新設した食料安全保障強化本部(森山本部長)で基本計画の検討を進める。 1月以降4回ほど会合を開き、一定の取りまとめを予定する。 国会 与党過半数割れ 「直接支払」で激突も 今月24日召集の通常国会でまず焦点となるのが、25年度予算案の審議だ。 与党が過半数を割った衆院で予算案を可決するには、野党の賛成が不可欠。 衆院通過を巡る与野党攻防のヤマ場は2月末ごろとなりそうだ。 政府は農業関係で、農畜産物の価格形成を巡る法案の提出を予定する。 生産者ら売り手がコストを把握・説明し、小売業者ら買い手がそれを考慮して値上げを検討する仕組みを目指す。 最終的な価格は、当事者間の交渉に委ねる。生産費の考慮を努力義務とし、取引を監視することで実効性を確保したい考えだ。 一方、昨年の衆院選で躍進した立憲民主党や国民民主党は、生産費の価格への転嫁だけでは農家の所得を確保できないとし、新たな直接支払制度の創設を求める。 法案審議でもこうした声が上がると見込まれる。 ただ、政府・与党には所得補償に否定的な声もある。与野党がどう折り合うかが焦点となる。 通常国会では他に、農地や水利施設の改良・保全について定める「土地改良法」や、3月が期限となっている「棚田地域振興法」などの改正案の審議も予定される。 10年後の地域農業の姿を描く「地域計画」は、3月に各市町村による策定の期限を迎える。作業の遅れを指摘する向きもあり、年度末にかけて重要な局面となる。 政府は、今後5年間で農業の構造改革を集中的に進める方針だが、25年度の農業関係予算は前年度からわずかな伸びにとどまった。 26年度予算でも財務省と綱引きが続きそうだ。 トランプ米政権発足 貿易交渉の矛先注視 外交面では、米国のトランプ次期大統領の動向が注目される。「辞書で最も美しい言葉は関税だ」などと述べ、友好国にも貿易交渉で圧力をかける姿勢を示しており、日本農業に矛先が向く恐れもある。 新政権は20日に発足する。貿易交渉を担う通商代表部(USTR)の代表にはジェミソン・グリア氏が就く。過去に日米貿易交渉も担当。「対外強硬派」と目される。 日米貿易協定で米国の主要な品目は関税が削減されている。そのため日本に対しては、生産ジャガイモの輸入解禁など検疫関係の要求が新たに繰り出されるとの見方もある。 ブラジルなど5カ国が加盟する関税同盟・南米南部共同市場(メルコスール)にも注意が必要だ。メルコスール側は経済連携協定の交渉入りを求めているが、畜産大国を抱える相手だけに、自民党内には反対の声が強い。これとは別に、政府はアルゼンチン北部地域からの牛肉輸入解禁も検討している。 日本からの農林水産物・食品の輸出は節目を迎える。政府は25年に輸出額を2兆円とする目標を掲げる。 24年は1~10月で1兆1702億円と過去最高のペースを維持しているものの、近年は伸びが鈍化。 目標達成が危ぶまれる。昨年の日中首脳会談で再開を打診した対中牛肉輸出などの動向も注目される。 25年は国際協同組合年だ。協同組合組織でつくる全国実行委員会は、超党派の「協同組合振興研究議員連盟」に国会決議の採択を要請した。 協同組合の価値を確認する年となることが期待される。 日本農業新聞 2025年1月1日 [論説]作る人と食べる人 対等互恵の関係築く年に 2025年が明けた。今年は国連の定めた「国際協同組合年」。作る人、食べる人の垣根を低くし、対等な立場で食という恵みをお互いに分かち合う。そんな「対等互恵」の関係を築く年としたい。 JAと生協、生産者と消費者、農村と都市がともに力を合わせ、持続可能な農業、農村につなげよう。 再生産確保が焦点 対等互恵。この言葉は半世紀前、協同組合運動の中から生まれた。 生活クラブ生協は、現在も生産者と交わす契約書の中に「対等・互恵の理念にもとづき連帯して、生産者及び生協組織と運動を強化発展させる」との理念を掲げている。 ウクライナ危機以降、輸入に依存する化学肥料や飼料などの価格高騰が長引き、農業経営を圧迫する。 政府は1月の通常国会で生産費を考慮した農畜産物の価格形成を促す関連法案を提出する見通しだが、直接支払いの拡充を含め、農家が再生産できる価格をどう確保するかが、大きな焦点となっている。 こうした中、同生協では食べる側、作る側が対等な立場で互いに話し合うことで価格転嫁につなげている。「生産者と消費者は互いに利益を享受している。 買う方が強いのが今の情勢だが、生産者をもっとリスペクト(尊敬)し、再生産できる価格を受け入れる必要がある」と同連合会の村上彰一会長。 同生協では生協組合員が提携する産地に移住し、農業にも積極的に携わる。山形県酒田市に建設された移住・交流の拠点「TOCHiTO(トチト)」には2023年以降、40代から80代まで多様な世代16人が入居。 都会と田舎の二拠点生活を楽しみながら、JA庄内みどり管内の提携生産者の元に援農に出向く。 お金を払う方が上で、もらう方が下。そんな縦の関係ではなく、食でつながる横の関係を広げることが求められている。 JAと生協が提携 生協発の取り組みに共鳴し「対等互恵」を直売所の理念に掲げるJAも出てきた。 中山間地域に囲まれたJA愛知東は、昨年オープンした直売所「グリーンファームしんしろ」の入り口に、この言葉を掲げた。 海野文貴組合長は「消費者は少しでも安いものを買いたい、生産者は少しでも高く売りたい。 相反する関係の中で、お互いが理解と尊重、そして感謝の念のもとに適正価格が成り立つという考え方が必要」と指摘する。 さらに、生協のコープあいちと「対等互恵」の理念を盛り込んだ新たな協同組合間提携を結び直し、「農産物を買うことで、地域農業を支えてほしい」と呼びかける。 農村と都市共生を 安ければ安いほどいい――。価格競争の果て、酪農家をはじめ全国の農家が離農に追い込まれている。農山村から人がいなくなれば農地は荒れ、地方は衰退する。負のループから抜け出すには作る人と食べる人、農村と都市が「お互いさま」の関係を取り戻す必要がある。 明治大学の小田切徳美教授は、「にぎやかな過疎をつくる」(農文協)の中で、「農村なくして都市の安心なし、都市なくして農村の安定なし」という都市農村共生が、「農村=切り捨ててもよい地域」という考え方に対する対抗戦略になると主張する。 こうした考え方は、能登半島地震から1年となる被災地の復旧復興を進めていく上でも重要となる。財務省の財政制度等審議会は、コスト重視の集約的なまちづくりを提言したが、石川県珠洲市で復旧を支える元農水省職員の本鍛治千修さんは「非効率な零細農家を切り捨て、規模拡大を支援すべきだという声もあるが、誰が日本の原風景を守ってきたのか。誰が水田の持つかん養力で洪水を防いできたのか」と問う。 利益やコスト、効率、規模拡大ばかりを追求する経済優先の社会構造は、働く人の意欲をそぎ、やがて衰退する。分断を超えて違いを受け入れ、互いに恵みを分かち合う「友愛の経済」(協同組合の父・賀川豊彦氏)が今、求められている。 |

第9回 コメ政策と飼料用米に関する意見交換会2024 報道記事特集
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